奇跡の人たち

ひきこもりおばさんのひとり言です。

奇跡の人たちとは、都営アパートに住むAさんご夫婦だ。戦争を生き抜き、大きな交通事故にあった時も傷一つなかったご主人、30代に腎臓を壊し、透析が始まるもずっと同じシャンテを使い続けて元気な奥さん。こんな話なら他にもある。じゃあ何が奇跡なのか。

心理療法を始めた頃、『子供が親のためにいるのではなく、親が子供のためにいる。親は自身を犠牲にすることを全く厭うことはなく喜びに感じるものだ』と言われた。本当だろうか。そんな親いないよ。あっ!いた!Aさんだ!

Aさんは、バスの整備の仕事をして子供二人を育て、家を建てた。ご夫婦仲は良く、ご近所の人を大切にして、幸せに暮らしていた。が、ご長男の事業がうまくいかず、返済のため家を売り都営に越してきた。「皆さんいい方ばかりでいい所に越せて嬉しい」と得意の煮豆を振る舞った。これは、全く強がりで、心中は情けなく、悔しくて悲しい筈だ。ところが、Aさん達は違った。苦労して買った家であっても、子供の窮地を救うのは至極当たり前の事なのだ。70代から始めた書道を楽しみ、身体の許す限り地域活動にも参加して日々を楽しんでる。『本物の親』が実在した事は、私の心理療法に良い影響があったと思う。Aさんご夫婦には感謝してもしきれない。

ご飯を食べさせるのが好きなAさんに、よくご馳走になった。夫に「ほら!」と手伝わせ手際よくおかずが並ぶ。もちろん美味しいのだが、ニコニコしてるご主人の顔を見ながら「美味しいでしょう」と奥さんに言われると、この世にこんな美味しいものはない!という奇跡が私の中に起こる。

本当に奇跡の人たちだ。